量子コンピュータとはどんなコンピュータ? 量子力学って何?

先日、ある特定の計算で量子コンピュータが従来のコンピュータを上回ることに成功した、とGoogleが発表しました。量子コンピュータとはどんな技術なのでしょうか? 私たちが普段使っているコンピュータとは違うものなのでしょうか。簡単に解説します。

量子力学とは?

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量子コンピューターとは、量子力学で見られるような「重ね合わせ」の状態を利用することで可能になる新しいコンピューターです。

 

しかしそう言われても意味がわからない、という人が大半だと思います。
量子コンピュータの実現に重要な「重ね合わせ」という概念は、量子力学という日常生活の中ではあまりなじみのない学問で扱われるものなのでそれも当然のことです。

まずは量子コンピュータについて理解するために必要な、量子力学に関するごくごく基礎的な知識のお話から始めましょう。

 

量子力学とは、

物質を構成する原子や電子などにまつわる物理現象について考える学問です。

この学問ははっきり言って、非常に不思議な考え方を含んでいます。

そのうちの1つが「重ね合わせ」です。

量子力学では電子や陽子、中性子などの粒子のことを、「量子」と呼んでいます。

この量子というのは動きが不規則で、どのように動くかを予測することができません。

物質の動きなどの法則性を考える物理学にとって、これは問題です。

そのため量子の動きをどのように説明するか、ということについて多くの科学者が頭を悩ませました。

その中で生まれたのが、量子の動きや状態を確率で表現するという考え方です。

つまり「この量子はこう動く」と断言することができないため、

「この量子は○%の確率でこう動く」と表現することにしたのです。

しかし確率で表現するということは、実際にどうなっているかは確認するまでわかりません。

実はこの「わからない」状態こそが先程お話した「重ね合わせ」なのです。

「重ね合わせ」というものがどういうものなのかを単純化して表現すると、

「量子は観測されるまでA地点とB地点のどちらにあるのかわからないからA地点にもB地点にもあるといえる」

ということになります。

つまり「重ね合わせ」とはあり得るかもしれない2つの状態が重なり合っていて、

観測されて初めてAにあるかBにあるかわかるという状態なのです。

正直なところ、非現実的な話だと感じるのが普通だと思います。

実際、あのアインシュタインもこの考え方には否定的だったと言われています。

しかし数々の検証を経た結果、確かにこの考え方は量子を説明するのに適しているということになっていったのです。

量子コンピュータとは?

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量子コンピュータは、この「重ね合わせ」を利用したコンピュータです。

私たちが普段使っているコンピュータを、古典コンピュータと呼ぶことがあります。

いわゆるスーパーコンピュータも、原理としては私たちの使うコンピュータと同じであるため古典コンピュータです。

コンピュータは0と1という二つの数字だけで他の数字を表現して計算を行う二進法という方法を使っています。

例えば二進法で「1001」と書いた場合、

私たちが普段使っている十進法では「9」を表していることになるのです。

古典コンピュータが0や1という数字で計算をするためには、

「ビット」が必要になります。

ビットとは情報量の単位で、1ビットあると数字を一桁表現することができます。

つまり0と1を組み合わせて四桁の数字を作るとすると、5ビット必要になるということです。

一方の量子コンピュータの場合は、ビットではなくキュービットという単位を使います。

ビットとキュービットの違いは、一つ当たりで表現できる数字の幅にあります。

古典コンピュータのビットは0か1のどちらかしか表現できませんでしたが、

キュービットは0と1の両方を同時に表現することができるのです。

つまり量子力学の量子の「重ね合わせ」がビットにも適用され、「0でもあるし1でもある」状態を実現したということです。

 

「0でもあるし1でもある」状態だと、どのような利点があるのでしょうか。

例えば四つのビットで四桁の数字を表すとき、

それぞれのビットは一つずつ0か1かのどちらかを表します。

そのため、例えば「1001」のような一つの四桁の数字しか表すことができません。

対してキュービットが四つある場合はそれぞれのキュービットが0でも1でもあるため、

四つの桁それぞれについて0と1の場合両方を考えられます。

つまり4ビットでは「1001」のような一つの数字の計算しかできない一方で、

4キュービットあれば「1001」でも「0110」でも「1010」でも表現でき、

同時に16通りの計算ができるということです。

さらに、ここでは説明を割愛しますが、

量子の持つ「量子もつれ」という特性も相まって量子ビットは量子ビット同士で相乗的な効果も与え合います。

このように量子コンピュータは、「重ね合わせ」などの量子力学の考え方を
適用することで、

従来のコンピュータにはできない計算ができるようになったコンピュータなのです。

 

ただし量子が観測された瞬間にどこにあるか確定するのと同じように、

量子ビットも結果を観測するときには一つの数字になります。

このとき導き出される数字は、一発で計算の正解になるとは限りません。

そのため正確な答えを出せるようにするためには、

「アルゴリズム」という計算の仕方も一緒に考える必要があります。

例えば「グローバーのアルゴリズム」というアルゴリズムは、

一度に正解を導くことまではできなくても、

古典コンピュータよりも少ない回数の計算で正解を出すことができるという形で考案されています。

私たちの生活にどんな影響があるの?

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量子コンピュータは様々な分野での応用が期待されていますが、注意しなくてはいけない技術でもあります。

最も影響が懸念されているのは、暗号技術です。

金融機関などのセキュリティに利用されている代表的な暗号技術RSA暗号は、

桁数が大きい合成数の素因数分解問題が難しいことを安全性の根拠にしています。

しかしこれは量子コンピュータの得意な計算であるとされており、

量子コンピュータが実用化されると簡単に破られるようになる可能性があります。

ただ、一方では量子コンピュータにも対抗できる暗号技術の開発も進んでいます。

さらに先日のGoogleによる「量子コンピュータが古典コンピュータを上回った」とする発表は、ごく限られた条件下のものでありすぐに実用化が始まるというものではありません。

そのため、今すぐに何か私たちの生活に影響を及ぼすということはないと考えられています。

それでも私たちの想像を超えた可能性を秘めた技術であることも確か。

原理まで理解するのは正直難しいですが、今後私たちにどのような影響を及ぼすかには注意していきたいですね。

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