棋士の生き様が表れる!揮毫って一体何?

2019年9月26日、第60期王位戦七番勝負の第7局にて、木村一基九段が豊島将之王位を下し、木村九段が王位のタイトルを獲得しました。これまで何度もタイトルに挑戦しては、獲得にまで至らなかった木村九段。46歳3ヶ月での初タイトル獲得は史上最年長の記録で、まさに木村九段の揮毫「百折不撓」の文字が示す通りの記録となりました。 皆さんは将棋棋士の“揮毫”がどういうものか知っていますか?今回は揮毫が何なのか、そして現在活躍する将棋棋士の揮毫をいくつか紹介したいと思います。

揮毫って何?

まずは揮毫(きごう)という言葉自体について説明します。

揮毫とはデジタル大辞泉によると、

「毛筆で文字や絵をかくこと。特に、著名人が頼まれて書をかくこと。」

となっています。

「揮」はふるう、「毫」は筆を意味します。

 

つまり、棋士の方にお願いして色紙に何か書いてもらうことを『揮毫してもらう』と言うのです。

将棋棋士にとって、色紙や扇子にどのような言葉を選んで揮毫するかは、

その人の生き様や信念が色濃く反映されたものとなるのです。

 

それでは、実際の棋士の揮毫をいくつか紹介していきたいと思います。

木村一基王位・・・「百折不撓」

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まずは冒頭で紹介した、木村一基九段改め木村一基王位の揮毫について再度紹介します。

『百折不撓』(ひゃくせつふとう)

何回失敗しても志をまげないこと。「百折不撓の精神」

-デジタル大辞泉

まさに今回の偉業を成し遂げた木村王位にふさわしい言葉ではないでしょうか?

初タイトル獲得の年齢だけでなく、

四段昇段から22年5か月での初タイトル獲得というのは史上最長です。また、初タイトル獲得までの挑戦回数7回というのも史上最多の記録です。

 

さらに木村王位は過去に8局、「勝てばタイトル獲得」という一番に敗れており、

今回9局目にしてようやくタイトルを獲得できたのです。

まさに「百折不撓」の精神が、木村王位に初タイトルの栄冠をもたらしたと言えるのではないでしょうか。

羽生善治九段・・・「玲瓏」

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続いては将棋界で一番有名といって間違いない羽生善治九段の揮毫から紹介します。

羽生九段がよく揮毫するのは「玲瓏(れいろう)」という言葉です。

『玲瓏』(れいろう)
1 玉などが透き通るように美しいさま。また、玉のように輝くさま。
2 玉などの触れ合って美しく鳴るさま。また、音声の澄んで響くさま。
-デジタル大辞泉

もともとは四字熟語の「八面玲瓏」という言葉から取られており、

「どこから見ても透き通っていて、心にわだかまりがないさま」という意味があります。

 

感情を露わにせず、淡々と最善手を指して勝利を積み重ね続けてきた羽生九段を象徴するような言葉です。

羽生九段は他にも「風林火山」や「泰然自若」など様々な言葉を揮毫しますが、

この「玲瓏」は羽生九段の応援サイトの名称にもなっており、最も有名な揮毫と言えるでしょう。

藤井猛九段・・・「涓滴」

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次に紹介するのは藤井猛九段の揮毫です。

藤井九段は自身が考案した革命的な戦法『藤井システム』を武器に、かつで竜王位を三連覇した人気棋士です。

『涓滴』(けんてき)
1 水のしずく。したたり。
2 わずかなこと。少しばかり。
-デジタル大辞泉

そしてこの涓滴を使った熟語に下記のものがあります。

『涓滴岩を穿つ』(けんてきいわをうがつ)
わずかな水のしずくも、絶えず落ちていれば岩に穴をあける。
努力を続ければ、困難なことでもなしとげられることのたとえ
-デジタル大辞泉

まさにコツコツと努力して藤井システムを考案し、

将棋界に革命を起こした藤井九段らしい言葉ではないでしょうか?

 

ちなみに藤井九段も涓滴以外に複数の揮毫を持っていますが、

“ガジガジ流”と呼ばれる自身の終盤のスタイルから『我自我自』という文字

企画で書いたこともあるそうです。

中原誠十六世名人・・・「自知者明」

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最後に紹介するのは中原誠十六世名人です。

引退済の棋士ですが、

通算勝利数は歴代5位、

通算タイトル獲得数は歴代3位、

羽生九段が7つ獲得したことで話題となった永世称号も5つ持っているなど、

一時代を築いた非常に強い棋士でした。

 

そんな中原十六世名人の揮毫の一つに下記「自知者明」というものがあります。

これは老師の「知人者智、自知者明」(人を知る者は智なり、自ら知る者は明なり)という言葉から来ており、

他人のことを知っているものは賢いといえるかもしれないが、

自分自身のことを知っているものは明察な心を持つ最上の存在であるということを意味しています。

 

将棋に限らず勝負事においては相手のことがまず気になるものですが、

それ以上に自分自身を知ることのほうが大切であるということを揮毫にしていたのですね。

まとめ

今回は棋士の揮毫について紹介しました。

これまで将棋に興味がなかった人も、

それぞれの棋士が心に強い想いを持っているということを知れば、

対局自体は見なくともニュースには多少関心を持てるかもしれませんね。

 

普通に生きていたら揮毫する機会はないかもしれませんが、

棋士の揮毫に負けないぐらい強い気持ちをそれぞれが座右の銘として持っていることが大切ではないでしょうか。
(ライター:長井ガク)

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